Day 2:「保育園連絡帳」をWebに翻訳する午後
UI モック4日分、カレンダービュー、飼い主コメント機能、家族共有の従量課金。 ここまで丸一日。AIが代筆する世界の輪郭が、ようやく見え始めている。
Day 2 の午後は、ひたすらモック作りだった。 朝のうちにカメラを発注し、インフラ周り(Vercel・Supabase・Resend・Cron)の下地を整えていたので、午後はフロントエンドに集中できた。
最終的に手元に残ったのは、4日分のサンプル連絡帳、月のカレンダービュー、そして飼い主自身がコメントを残せる UI。 「もし AI が完璧にやってくれたら」の理想形のショーケース、ができた。
AIが届けたら、受動的にうれしい。
このギャップこそが、プロダクトの存在意義そのものだ。
設計の3つの核
1. SNS的タイムラインの逆を行く
参考にしたのは「みてね」(2500万ユーザー)でも、Day One でもなく、保育園の連絡帳だった。 子供の保育園から毎日届くあの紙の小冊子。先生の手書きで、その日の様子が3-5行。 それを読む親の表情を、私はずっと見てきた。
流れていくタイムラインの逆。本のページをめくる感覚。 タイトル → 写真 → 本文 → イラスト → 締めの一文、と順番にフェードイン。 通知バッジも、ポップアップも、「次の記事へ」の押し付けもない。静かに、読む。
2. 飼い主が自分で書ける「ひとこと」
AIが生成した連絡帳の末尾に、飼い主自身が書き込める欄を置いた。 空欄なら控えめなプレースホルダー、書き込めば手書き風フォントで残る。
なぜか? 心理学に Generation Effect という概念がある。 自分で生成した情報は、受け取った情報より3-4倍記憶に残る。 つまり「自分で書いた日」は、後から読み返したときの情緒のフックが圧倒的に強い。
さらに「コメントを残した日だけ」を絞り込めるフィルターも入れた。 カレンダーから「マイ記録」だけを巡れる、もうひとつの読み返し体験。 これは静かな解約抑制装置でもある。
3. 家族共有は「プラン昇格」ではなく「従量課金」
最初は、家族に共有できる招待 URL の人数をプラン別の上限にするつもりだった。 ベーシック 3名、スタンダード 5名、プレミアム 10名、というよくあるやつ。
でも考え直した。「祖父母+兄弟も入れたい、あと2名だけ」という人を、 2,000円のプラン昇格で迷わせるのは設計の負けだ。
結論: 全プラン共通で 3名込み、4名目から +¥500/月/名、上限 10名。 コーヒー1杯分の心理的軽さで拡張動機を取り逃さない。 6名構成なら +¥1,500/月 → LTV +¥90,000(60ヶ月)。プラン縛りより、ここの方が効く。
なぜ「ペット版・保育園連絡帳」なのか
ペットの様子を伝えるサービスは、すでに多い。 Furbo、Petcube、Tractive。みんなカメラと AI と通知の組み合わせ。
ただ、それらは 「監視」と「異常検知」の延長にある。 異常があったらアラート、なかったら沈黙。 これは「不在時間を安心するための装置」ではあっても、「不在時間を共有するための装置」ではない。
欲しかったのは、後者だった。 仕事中、ふと携帯を見たときに、うちの子の様子が「読み物」として届く。 異常がなくても、ただ、今日もふつうに過ごしていることが、文章で分かる。
それは保育園の連絡帳を読む親の体験と、構造的に同じだ。
プロダクトを通じて、世界中のペットと飼い主の関係性を豊かにすることが、究極の目的。
明日: 本物のパイプライン
ここまでのモックは、あくまで「もし AI が完璧にやってくれたら」の理想形だ。 実物の素材を手で並べて、人間が言葉を選んで作っている。
明日、Tapo C210 カメラが届く。 ここから本番。RTSP で映像を取得して、Claude Haiku に1枚ずつ判定させ、Sonnet が日記本文に編む。 この自動パイプラインで、モックと同等の質まで到達できるか。
鍵は 「写真選び」の精度だ。 「お昼のだらだら」級の決定的瞬間を、AI が何枚撮影中から選び抜けるか。 これが、$3/月/顧客 のコスト構造で粗利 88% を維持できるかの分水嶺になる。
このシリーズの位置づけ
この Articles は、Okaeri 開発のオフィシャル記録だ。 note の方 にも同内容を、少し時間差で公開していく。 初出は okaeri.pet、note はミラー。情報の正本はここに置く。
5/11(月) Day 2 の進捗、ここまで。